蕎麦屋のはなし
休みの日は蕎麦屋へ夕飯をかね晩酌しにいくのが好きです
今夜も行ってきました
でも今夜行ってきたところは少し訳ありの処でした
3ヶ月くらい前に自分の方から出禁にしようと決めた蕎麦屋
店主のおやっさんは好い蕎麦打ちなんだが店員の女衆がなっていない
何と言うか馴染みのある店にしては愛想の欠片もない
そんな態度を向こうから前面に出してくるような対応
せっかくの粋な飯も綻んでしまうような。。勿体ない
という理由からもう足を運ばないと決めた店なのだが
近所の別の蕎麦屋が閉店だったのもあって久しぶりに足を運んでみた
店主のおやっさんは閉店間際で1人でエアコンの清掃をしていた
もう終いかと思って店を出ようとしたところに声をかけてくれたので戴くことにした
もりそばと冷や奴とビールを注文した
すぐさまビールと冷や奴が運ばれてきてつまみだした
冷や奴は氷の入った器にはいっていて時期の風流さを漂わせていて薬味は別の皿で鰹節、しょうが、ネギがある
酒の肴として上出来な見栄えと旨さ
一品に対しての細やかな配慮が感じられるし、この店をそもそも好きになった理由はこういう店主の腕だった
もりそばがその後運ばれてきた
薬味にごま、大根おろし、わさび、ネギがある
蕎麦の食い方として自分流のこだわりがある
それは「わさびをそばつゆにいれずに蕎麦に塗る」そして「わさびの塗られた部分はそばつゆに浸けないで啜る」こと
その方が蕎麦の風味とわさびの薬味が2倍味わえるからだ
これは是非おためしあって欲しい食べ方です!
んで、そばを啜りながらそば湯割りを注文した
一杯戴き温かい酒に満足しおかわりを注文した
すると店主が2杯目を運んできた時に、
「蕎麦の釜の火をもうおとしてしまったので2杯目のそば湯割りは一日蕎麦を茹でた蕎麦湯ではなくて蕎麦粉をお湯で割ったものですから味が違いますがお分かりになりますか?」
と話しかけてきた
飲んでみたけれどいまいち違いが分からずに逆に聞いてみた
「では大将、さっきもりそばのあとに運んできた蕎麦湯を割って飲んでみるから焼酎だけ戴いていいですか? 」
すると店主のおやっさんは「そうか!その蕎麦湯があるのを忘れてたっ」
と言って新しい器に焼酎をいれて「この分のお代は結構ですから」と運んできてくれた
心遣いに感謝しながら2つのそば湯割りを飲み比べてみると味の違いに気付いた
とろみがあって味わい深いのは言うまでもなく一日蕎麦を茹でていた蕎麦湯のそば湯割り
いい晩酌になったなぁ〜っと満足に戴き会計を済まし店を出る時に
店主が「よろしくおねがいします!」と声をかけてきた
帰り道にふと思った
もしかしたらおやっさんは自分が店にこなくなったのを覚えていたのかな。
なかなか言えない一言を言ってくれた店主に心が満たされた
いい味といい心地だった蕎麦屋のはなし